広島に原爆が投下されて、6日で76年。被爆者の救済はいまだ議論が続けられ、東京電力福島第一原発の事故の収束も見通せない。この夏には「震災復興の象徴」とされた東京五輪が、コロナ下で開かれている。そんな「今」を、30年以上にわたり反核の詩を朗読してきた俳優の吉永小百合さんは、どう見ているのか。
――原爆詩を朗読するきっかけは映画出演だったと聞きます。
「21歳のとき、大江健三郎さんの『ヒロシマ・ノート』の一つのエピソードを映画化した『愛と死の記録』という作品に出演しました。4歳で被爆した青年が恋人と幸せになろうとしていたのに、白血病を発症して亡くなってしまう。その1週間後、恋人は後を追う――というお話です」
「撮影はちょうど8月、広島で。平和記念公園や原爆ドームでも撮り、私の中に強く印象が残りました。でもすぐに朗読の活動につながったわけではないんです。詩の朗読を始めたのは、1980年代になってからでした」
――テレビドラマ「夢千代日記」に出演されたころです。
「広島の原爆で胎内被爆した主人公の女性・夢千代を演じました。ドラマは足かけ4年続き、放送後、被爆者団体の方たちから、平和集会で原爆の詩を朗読してほしいという依頼を受けたんです。いただいた20編ほどのなかから、自分が読みたい詩を選びました。中学のころ、教科書で峠三吉(とうげさんきち)や原民喜(はらたみき)の原爆詩を学びましたが、これほどたくさんの詩があるのかと初めて知りました」
「朗読してみると、自分自身の胸がなにかこう熱くなった記憶があります。実際に声を出して、あのとき被爆した方たちの思いが自分のなかに入ってきたという感じでしょうか。いままで感じたことがなかった感情でした。それで、朗読を続けてきました」
――原爆や平和への思いは、演じることで強くなったのですね。
「20代で俳優として演じた…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル